カテゴリー: book review

6/15◎入荷のお知らせ 鳥類図鑑

ドイツの各種刺繍、クロス・ステッチ、日本の図鑑など入れました。

ドイツ『デンマークのクロス・ステッチ』ゲルダ・ベングトソンなど
図鑑『原色野鳥ガイド・上巻』石沢慈鳥
ドイツ『ロシアの伝統クロスステッチ』
ドイツ『ツル植物・花・オーナメントの白糸刺繍』
ドイツ『チュールとオーガンジー・繊細な刺繍』

今日入れた鳥類図鑑の著者、石沢慈鳥さんは本名・石澤健夫さん。
1899年、山形生まれの方で、こちらの山形県立博物館のページ(→ LINK)に詳しい説明があります。

図鑑『原色野鳥ガイド・上巻』石沢慈鳥


商品コメントにも書きましたが、この本の卵ページ、とてもうつくしい! このページをそのままポストカードにしていただだきたい~と見もだえしながら入力しました。

梅雨空ですね。
今日はすこし肌寒いくらいです。
どうぞ良い週末を。

5/11◎入荷
『婦人画報』文化人縁戚関係

ドイツの白糸刺繍関連本、大正時代の「婦人画報」など入れました。

『婦人画報』 大正七年七月号
ドイツ 新しいハーダンガー『Hardanger. Neue Stick』
ドイツ『burd 総集編 2』 カーペット・織物・パッチワーク・ホワイトワークなど
東ドイツのホワイトワーク本『Weissstickerei』
ドイツの白糸刺繍シュヴァルム本『Die Schwalmer Weissstickerei』

ドイツのホワイトワーク関連本は、まとめて入荷がありました。
次回の更新でも関連本を少し入れられそうですので、そちらをご覧になってから、まとめての発送をご希望の方は、ご注文の際その旨、通信欄にお書き添えください。

また今回の『婦人画報』にも当時のセレブ写真がずらりと掲載されています。写真に添えられたキャプションは、なんと日本語・中国語・英語の三ヵ国語のトリリンガルです。

『婦人画報』 大正七年七月号


わたし的に、ほーと思ったのは、厨川白村の奥さま蝶子さんが、福地桜痴の娘さんだと始めて知ったこと。本誌のキャプションに書いてありました。
厨川白村とは、大正時代のロマンチスト青年に大大流行した『近代の恋愛観』の著者で英文学者です。当時、あの有島武郎(「白樺」同人で『婦人公論』記者であった人妻と心中)と人気を二分したといいますから、大正浪漫の中心人物のひとり、といってもいいでしょう。が、関東大震災の津波が原因で、本誌発行5年後の大正12年に惜しまれつつも逝去。詳しくはこちら(→ wiki
また福地桜痴はジャーナリストで劇作家で政治評論家で明治期のものを読んでいると、まあとにかくいろいろなところからよく顔を出す、マルチな活躍をした方です。一般的には『東京日日新聞』の社長としてが最も有名でしょうか。詳しくはこちら(→ wiki
縁談は知人の紹介から、が一般的だった当時、文化人縁戚関係もいろいろあっておもしろそうですね。

明日から暑さが戻ってくるとか。
どうぞよい週末を!

5/8◎入荷のお知らせ 『婦人画報』掲載は上流階級の証

スウェーデン、ノルウェー、ドイツの刺繍、織物本、日本の雑誌など入れました。

『婦人画報』 大正七年十一月号
ドイツ『伝統の美しい刺繍パターン』Die schonsten Stickmuster aus alter Zeit
ノルウェー『織物の本』Vevebok
スウェーデン『刺繍ステッチ集』

大正時代の婦人画報については、こちら(→ LINK)にも書きましたが、写真が特別だった時代、上流階級・有名人のお写真がたっぷりと載ったこの雑誌は、庶民の手には届かない高級グラビア誌でありました。だから、この雑誌に写真が掲載されるのは一種のステータス。
初々しいご令嬢方(経歴付)、軍人一家の家族写真、そして海外からの日本を訪れた著名人まで、様々な人々の姿が華々しく収められています。
婦人誌なだけにどの写真もいかめしい公式お写真ではなく、私的な一ページといった趣なのも興味深い。

前回、お知らせした白樺細工のマニュアル本。いま日本へ向かっている途中です。
お楽しみに。

『TUOHITOIDEN KASIKIRJA 2』白樺細工のマニュアル2近日入荷予定

4/17◎入荷のお知らせ ラトビアのミトン編み込み模様集・河野鷹思・寺山修司

ラトビアのミトン編み込み模様集、河野鷹思図録、寺山修司本(サイン入り)など入れました。

『日本童謡集』寺山修司編著(サイン入り)
ラトビアのミトン模様集・575種『Latviesu Rakstainie Cimdi』
『河野鷹思のグラフィックデザイン 都会とユーモア』

ラトビアのミトン模様集・575種『Latviesu Rakstainie Cimdi』は、編込み模様がぎっしりと詰まったすてきな一冊。

ラトビアのミトン模様集・575種『Latviesu Rakstainie Cimdi』


手で書き写したようなチャートも味わい深く、また図案の質量もうっとりするほどすばらしく、眺めているだけであっという間に時間が経ちそうな一冊です。

また河野鷹思の図録は、東京国立近代美術館で行われた展覧会のときのもの。

『河野鷹思のグラフィックデザイン 都会とユーモア』


彼のデザインは、格好いいのだけれどシャープ過ぎず、温かみがあってモダン。
名取洋之助の「NIPPON」表紙を含め、日本の伝統色の使い方など、今の時代にもヒントになりそうな和×洋×グラフィックのハイブリッドデザインではないかと思います。

そして寺山修司の童謡集は、寺山修司=子守歌、ふるさとからきたであろう一冊。こちらはサイン入りです。

『日本童謡集』寺山修司編著(サイン入り)


個人的には裏表紙に入った深沢七郎の推薦文が相変わらずの深沢節で面白く、寺山×深沢のふたりの名まえが入っている「唄の本」というところがいいなあ、と思っています。深沢さんもギター弾きですしね。

新学期が始まり、PTAだとか、授業参観だとか、子ども会だとか(役員になってしまった…ううっ)あわあわしていた日々が、ようやく少し落ち着いてきました。
月の後半に向け、ネジを巻きなおしていきたいと思います(希望)。
よろしくお願いいたします。

4/13◎入荷のお知らせ ・内藤ルネ『薔薇の小部屋』

スウェーデンの織物本、アメリカの絵本、ローワンのパッチワーク本、内藤ルネの伝説乙女雑誌など入れました。

絵本『Let’s Find Out About Air』ソノシート付
絵本『Let’s Find Out About FALL』ソノシート付
創造の楽しみ・エリスのパターン集『Skapargladje-Elsies Monsterbok』
『薔薇の小部屋』2号・特集おもいでの少女小説
ローワン・パッチワーク&キルトNo.2『Rowan Patchwork and Quilting Book Number 2』ケイフ・ファセットの20のデザインなど

ルネさんの『薔薇の小部屋』は、いろいろな意味で力の入りまくった、とてもすばらしい本です。

『薔薇の小部屋』2号・特集おもいでの少女小説

吉屋信子、宇野亜喜良、森茉莉、熊井明子、松本かつぢ、田村セツコ、城夏子、淀川美代子、田辺聖子、美輪明宏などなど目次に並んだ名前だけとっても、「乙女街道」直球ど真ん中。
この世界のスターとでもいうべき方々がずらりと勢ぞろいしていて、ああ、ルネさん、ほんとうにこういう雑誌が作りたかったのね(涙)と、その振り切れ具合に胸が熱くなる思いです。
ルネさんの師匠・中原淳一もそうですが、吉屋信子はじめ、主要「乙女」メンバーの作品には、マイノリティのつらさ、さみしさ、やりきれなさ、そこから生まれる矜持のようなものがそこはかとなく感じられ、その「影」が乙女を乙女たらしめている重要な要素の一つなのではないかと思います。
たいへん濃ゆい一冊ですが、その濃さがお好きな方には、心を込めておすすめする一冊です。

どうぞよい週末を~。

3/16◎入荷のお知らせ 『アイヌの生活』

スウェーデン・ノルウェーの織物本、アイヌの人々の写真冊子、イタリアの手芸雑誌、フィリシタス・クーンのかわいらしい絵本など入れました。

スウェーデンの手織り本『Vav med tradition』伝統を織る
フェリシタス・クーンのイラスト絵本『 Uber Stock und uber Stein』
イタリア手芸雑誌『RAKAM』1993年3月号
イタリア手芸雑誌『RAKAM』1992年4月号
織り物のパターン集&織物ガイド二冊合本『Lar a vave pa tangentvev&Veve monstre』
『アイヌの生活』北方文化写真シリーズ
セゾン・ド・ノンノ特集・パリ大地図帳

今日入れた『アイヌの生活』は、アイヌの人々の暮らしぶりを写真とテキストで記録した一冊です。

『アイヌの生活』北方文化写真シリーズ


本書では、機織り、裁縫、むしろ編みなどにいそしむアイヌ女性の様子も、写真で取り上げられています。
アイヌ民族博物館HP(→LINK)によると
「好きな異性ができると、男性は女性用小刀などの道具類、女性は手甲などの衣服類をプレゼントし、受け取った側は、それらを身につけることで交際の意思表示をしたといわれます。」
とあるように、男女間の好意を表す手段として、ハンドメイドの品を贈りあうというのがいいですねえ。書籍コメントにも引用したように、
「刺繍の上手なことが女子の美点の一つに数えられると共に、美しい芸術彫刻品をつくることが男の誇りの一つとされていたのである」(「彫刻」『アイヌの生活』)
というのもすてきです。

明治初期のアイヌの人々といえば『イザベラ・バードの日本紀行』もよく知られています。
維新後まもない明治期に、東北を経て北海道に渡ったイギリス人女性イザベラ・バードは、どこか「ヨーロッパ的な」アイヌの人々がたいそう気に入ったようで、彼らの暮らしぶりを結構な分量をさいて克明に記しています。
「アイヌの女は、できるときにむしろや樹皮布を完成品あるいは材料として売りますが、夫は妻の儲けを取るようなことはしません。アイヌの女性はだれでも樹皮布のつくり方を心得ています」
「樹皮で織った布は耐久性があって美しく、自然の色合いもさまざまで、手芸愛好家におなじみの生地『パナマ・キャンヴァス』とどこか似ています」
機織り、入れ墨、結婚、女性の地位など、アイヌの人々の暮らしが、こちらは文章で、ですが、詳しく記されていておもしろい。
ちなみにこの本、上下二巻あり、アイヌの人々について触れてあるのは、下巻。おすすめです。
(出版社→ LINK ・アマゾン→ LINK

暖かくなったかと思ったら、今日は一転、ひどく寒くなりましたね。
季節の変わり目です。
良い週末を。

2/9◎入荷のお知らせ
エストニアのセーター・宇野千代の雑誌

エストニアのセーター本、民族衣装の本、宇野千代の雑誌「スタイル」を入れました。

エストニアのセーター・コレクション『Eesti kampsun』
エストニアの民族衣装・頭飾り『Neidude peakatted』
宇野千代編集発行雑誌「スタイル」昭和21年4月号

エストニアのセーター本は、表紙はいくぶん地味ですが、中身はうつくしいセーター写真集といった趣のすてきな一冊です。

エストニアのセーター・コレクション『Eesti kampsun』


この本の解説によると、エストニアの国立博物館には、無名の編み手による民族衣装から、アーティストによってデザインされたもの、種類も頭からかぶるタイプのジャケット、ボタンがついた前開きのものなど様々なセーターが、286所蔵されているのだとか(2013年時点)。
当然のことながら素材となる糸を紡ぐところからぜんぶが手作業で、これを作るのに費やされた時間を思うと、圧倒されます。

また宇野千代の雑誌「スタイル」は、コメントにも書きましたが戦争で一時中断したものを、戦後再刊した2号目となります。

宇野千代編集発行雑誌「スタイル」昭和21年4月号


この号では、雑誌「暮しの手帖」に花森安治と参加し、その後長年にわたって同誌の写真を撮り続けた松本政利さんが写真を担当。
暮しの手帖の前身となる「衣装研究所」も、終戦直後の同じころ、宇野千代のスタイル社があった有楽町近くの銀座にあったといいますから、何らかの交流または意識の仕合があったのでしょうか。

創刊者である宇野千代は、おしゃれで人たらしで恋愛上手でおまけに美人。良くも悪くもスケールが大きく、バイタリティにもあふれ、それだけにありあまるエネルギーを多くの人に分け与えることができた、なかなかおもしろい作家さんです。
ずっと以前に出した拙書『おんな作家読本』(ポプラ社)の作家さんいうと、林芙美子と宇野千代は、千代の方が6歳おねえさん。
けれど47歳で若くして亡くなった芙美子に比べ、98歳で亡くなった千代は、明治大正昭和平成と四つの時代を生き、今も記憶している人が多い作家(兼有名人)でもあります。
千代の人生を知ると、長生きってやっぱすごい、とも思うのでした。

どうぞよい週末を。

1/26◎入荷のお知らせ 矢川澄子の「少女」

スウェーデンの白樺細工、織り物、ドイツの白糸刺しゅう本、日本の小説、実用書などを入れました。

『白樺細工』Naver – En studiebok i naverslojd
『婦人ものしり宝典』昭和4年 婦人倶楽部付録
『架空の庭』矢川澄子
『北欧のフォークアート』Nordisk folkkonst
ドイツの白糸刺繍シュヴァルム本『Die Schwalmer Weissstickerei』
スウェーデンの織物本『Vava med Hemslojden 2』ヘムスロイドの織り物

今日入れた矢川澄子さん。
澁澤龍彦氏の元奥様としても、絵本の翻訳家としても、詩人としてもよく知られている方です。
残されたお写真でもわかる通り、ご本人もとてもかわいらしくて、ほんとうに「少女」という形容が似合う方でした(Wiki→LINK)。
矢川澄子さんの文学を好きかどうかは、今日入れた本のコメントにも書きましたが、彼女の作品及び彼女自身が持つ、
『永遠に完結しない、自己矛盾に満ちた「閉じない輪」としての「少女」』
が好きか嫌いかに分かれるような気がします。
2002年に矢川さんが自らお亡くなりになったとき、ああ、と思いました。こういうラストを迎えられたのかと驚くと同時にどこか腑に落ちる思いもあり、複雑な気持ちになったのを覚えています。

『架空の庭』矢川澄子

どうぞよい週末を。

1/19◎入荷のお知らせ 「青踏」と富本一枝(尾竹紅吉)

日本の手芸本・絵本、DMCの手芸辞典など入れました。

DMC 手芸百科事典『Encyclopedie des ouvrages de dames』
『お母さんが読んで聞かせるお話AB』二冊セット藤城清治サイン入り
『手あみ模様編880集』 かぎ針編 棒針編 アフガン編
『フェアアイル・ニッティング』 佐藤ちひろ

今日入れた『お母さんが読んで聞かせるお話 AB』は暮しの手帖社から出されていた本です。
作者の富本一枝さんは、明治の終わりごろ、平塚雷鳥などによる女性誌「青踏」のメンバーのひとりでした。当時の名まえは「尾竹紅吉(べによし)」。
18歳で憧れの「青踏」に参加し、吉原に登楼したり、恋人だった雷鳥が男子(のちの夫・奥村博)に走ったのに怒って騒動をおこしたり、自由奔放というか後先考えずというか、おそらく若かったせいもあるのでしょうね(いいことです)。激しく情熱的な「新しい女」としても知られていました。
その後、陶芸家の富本憲吉と結婚するも、結婚生活はうまくいかず、ふたりは長い間、別れて暮らします。しかし一枝は離婚をせず、亡くなるまで憲吉の妻であり続けました。

女性問題や歴史に詳しくない人でも、おそらく名前だけは知っているこの「青踏」。
じつは創刊号の発行部数は、わずか1000部。今でいうミニコミかリトルマガジンほどの少部数でした。
思い切って投げたちいさな石が、次第に大きな波紋となり、世界を変えていく。ほんとうに刺激的なモノやコトは、もしかしたらほんの小さな、でもたいへんに情熱的な仲間やグループから始まるのかもしれず、それを思うと、いつもじんっとします。

さて、今週末は晴れるかしら? どうぞよい週末を。

12/21◎入荷のお知らせ 昭和初期の原色図鑑

日本の織物本、絵本、児童書、図鑑などなど入荷しました。

『家庭のスウェーデン織 フレミッシュ織他12織法』山梨幹子・著
『原色 園芸植物図譜 学生版』石井勇義・著
『メリー・メリーを追いかけて』高田 桂子 ・著、‎ 宇野 亜喜良 ・絵
『さかさまライオン』長新太サイン入内田麟太郎・文、長新太・絵

昭和初期の原色図鑑は個人的に好きで、荻窪で店をやっていた時からちょくちょく店頭に出していました。

『原色 園芸植物図譜 学生版』石井勇義・著


「原色」は今でいう「オールカラー」の意。
カラー印刷がまだ高価で珍しかった時代の初々しい喜びと、あの時代の印刷ならではの味わいのある色あいがたまりません。
今回の書籍のように、背景紙の上に当該植物を縦に(つまり生えているままに)並べ、それを俯瞰から撮るというある意味斬新過ぎる写真もツボで、いいなあと思います。
ちなみにこの構図、当時の植物図鑑ではなぜか頻発で、流行っていたのか、簡便だったからか。面白いです。

また現在品切れ中の
エイヤ・コスキ 『ヒンメリのハーモニー』日本語版
エイヤ・コスキ フィンランドのヒンメリ『HIMMELI』 英語版
は、近日中に再入荷ができそうです。

再入荷の連絡をご希望の場合は、各ページのフォームにご連絡先をご記入の上、送信ください。入荷でき次第、ご連絡いたします。

また
ノステピン(毛糸巻き棒)
セルブーミトン図案集
も再入荷の際のご連絡を承っています。こちらも各ページにフォームがありますので、ご希望の場合はそちらからご連絡ください。

12月26日から始まる荻窪Titleさんでの古本市、準備が少しずつ整ってきました。また出品本の一部をインスタやツイッターで紹介できたらなどと考えています。
よろしくお願いいたします。

12/5◎入荷のお知らせ 大高輝美さんのマスコット本

スウェーデンの刺繍図案集、伝統工芸展の図録、日本の絵本、手芸本などなど入れました。

『Swedish Handcrafts Exhibition スウェーデン伝統手工芸展』
スウェーデン アルファベットと刺繍の図案集『namna och brodera』
『こまどりのクリスマス』こどものとも訳・渡辺茂男、画・丸木俊
『大高輝美のお人形』てるみのおもちゃ箱
『大高輝美のフェルト細工』てるみのお店屋さん

今日入れた大高輝美さんのマスコット本、うわ~懐かしい~と身もだえされる方、多いのではないでしょうか。
わたしも小学生のころ、この大高先生の本を見てマスコットを作っていました。確か、一緒に手芸部に入っていた友だちもこの本を持っていて、ここからたくさんのマスコットを量産していた覚えが。

と思って検索してみたら、2014年に行われた大高先生のインタビューがありました。
Stitch Special:人形作家 大高輝美先生インタビュー
無料レシピの掲載もあるそうですよ。

寒い日が続いています。今日、初雪という地域もあったと聞きました。
暖かくしてお過ごしください~。

7/11入荷

フレメ刺繍の図案集、デンマークの北欧家具本、日本の手芸本、雑誌を入荷しました。
『Handvaerket viser vejen』デンマーク家具の40年 1927-1966年
『婦人画報』 大正八年十月号
『婦人画報』 大正九年一月号
『婦人画報』 大正八年三月号
『フェアアイル・ニッティング』 佐藤ちひろ
デンマークのフレメ刺繍図案『クリスマスのクロスステッチ』

今回入れた大正時代の『婦人画報』。
ウリは上流階級の奥方、お嬢さまのお写真がたっぷり入ったグラビアページでした。以前出した拙書(『おんな作家読本』ポプラ社)でも触れましたが、じつはこのお写真、男女交際もままならなかった時代だけに、一種のお見合い写真のような役目を果たしたこともあったのだとか(ちなみに作家・森茉莉の異母兄も、雑誌で見染めた美女を最初の奥さんに迎えています)。
読者が上流階級に限られていたからこそできた芸当ですね。

他にも歴史の教科書からはなかなか見えてこない、女性から見た大正時代の日本(と世界情勢)がうかがえて、とてもおもしろい。ぜひご覧ください。

図書館通い  娘と読んだ絵本のはなし5 (2歳~2歳半ごろ)

pb5 前にも書きましたが、娘がちょうど2歳になったあたりで、私たち家族は今の家に越してきました。

 その後、通い始めた図書館は、おもに4館(プラス、たまに利用が2館)。
 週に二三度、いま思うと、ちょっとどうかしてるくらいの頻度で、せっせと通っていました。

 とはいっても、借りるのはほぼ絵本だけ(ほかの本を借りても、読む時間も気力もなかった…)。
 おかげで絵本まみれの日々でした。

この時期よく読んでいた絵本リスト
頻繁な図書館通いのおかげで、この時期から読む冊数がどどーんと増えました。そのためリストもすこし長めです。
※どの絵本もこの時期よく読んだものですが、この後も、何度もくり返し読んでいます(なかには5歳になった今でも大好きなものも)。なので月齢はあくまで参考程度に。

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『ぞうくんのおみまい』
おぼ まこと・作 福音館書店
病気になったおばあさんのお見舞いにリンゴを持って家を出た「ぞうくん」。友だちと町へ行くバスに乗ろうとしたけれど、あらら、やってきたバスはなんと満員! 襲い掛かる災難(と空腹)に耐えながらがんばる「ぞうくん」の姿に子どもたちもドキドキそわそわ。冒険気分を満喫できます。うさぎの女の子のワンピース(ひざ上)がサイケな水玉模様だったたり、おばあさんのお布団が総☆模様だったり、はじける70年代パワー(初版は1975年)もたまりません。

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『コッコさんおはよう』(コッコさんシリーズ)
片山健・作 福音館書店
コッコさんが眠っているうちに、「そおっと」やってきて「ゆっくり ゆっくり」、しかし着実に、空を、犬を、林の鳥を静かに起こしていく「朝」。淡い水彩のにじみから生まれる豊かでしあわせな「子ども時代」が画面じゅうできらきらと微笑んでいるような、なんともいえない幸福感に充たされる一冊です。他のコッコさんシリーズは正方形に近い「こどものとも年少版」ですが、これは縦長の「こどものとも年中版」。シリーズのなかで(いまのところ)唯一ハードカバーになっていない本でもあります。
版元の本紹介ページ / Amazonは現在この本を扱っていないようです。他のコッコさんシリーズはこちら(パソコン)

『ふわふわくんとアルフレッド』(岩波の子どもの本)
ドロシー・マリノ・作 石井桃子・訳 岩波書店
表紙の男の子の名前は「アルフレッド」。その後ろでソファーに座っているクマのぬいぐるみが「ふわふわくん」。ふたりは何をするにも一緒の仲良し(つまりラブラブ)。ところがある日、アルフレッドのもとに新しいトラのおもちゃ「しまくん」がやってきて…。目新しいコ(しまくん)の登場で、古女房(ふわふわくん)との関係がガラリと変わるという、古くて新しい永遠の三角関係が、すばらしくキュートな絵で気持ちいいくらいさっくりと描かれています。男子は「モノ」に、女子は「関係」に惹かれる傾向があるといいますが、うちの娘も「関係」を描いたこの絵本がびっくりするくらい好きで、何かに憑かれたように何度も読んで欲しがりました…。
版元の本紹介ページ(現在品切れ) / Amazonページ(パソコン) / Amazonページ(モバイル)

『どこでおひるねしようかな』
岸田衿子・文 山脇百合子・絵 福音館書店
お弁当を食べてお腹いっぱいになった動物たちが、それぞれすてきな「おひるね場所」を探し、うとうととしあわせな眠りに入るまでを描いた一冊。「ほんの すこし あかるくて すこし くらくて しずかでね きもちのいい かぜ ふくところ」。岸田衿子さんのゆっっったりとした文章と、山脇百合子さんのやさしい絵が、「おひるね」の時間を明るく包みこみます。この時期は、おひるねの前はいつもこの本を読むのが日課でした。
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『クリスマスのふしぎなはこ』
長谷川摂子・文 斉藤俊行・絵 福音館書店
クリスマスの朝、「ぼく」が縁側の下で見つけたちいさな木箱。そっとあけてみると「あっ、サンタさんがいる」。プレゼントが楽しみ過ぎる「ぼく」と、「ぼく」の町に少しずつ近づいてくるサンタさん。時間の経過とともに高まる期待が、見開きごとに描かれる「ぼく」とサンタさんのおかげで、さらに盛り上がるものになっています。タンスや障子のある家、クリスマスケーキを食べながら日本酒で晩酌するお父さんなど、マットな色合いで描かれた、へんに外国っぽくない「日本の正しいクリスマス」も、この絵本が持つ独特の味わいに一役買っています。
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『トンガのきいちごつみ』
広野多珂子・作 ひさかたチャイルド
タンポポを摘んだり、赤い実を採ったり。散歩に出ても驚くほど進まない、この時期の子どもたち。低い目線のおかげで、いろいろなものが大人より大きく、そして興味深く見えてしまうのでしょう。ヘビに出会ったり、キツネに襲われたり。ちいさな体でひとり(一匹?)、キイチゴを摘みに出かける子ネズミ・トンガの冒険は、そんな子どもたちにぴったり。トンガのミニ・サイズにあわせて、大きくかつリアルに描かれた春の草花にもうっとりします。
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『やまのディスコ』
スズキコージ・作 架空社
オープンしたばかりの「やまのディスコ」に出かけた、「しろうまのみねこさん」(表紙向かって左)と「やぎのさんきちくん」(同、右)。こっくりとした色合いで描かれた、たくさんの動物たちが繰り広げるお話は、すばらしく面白いどこか不思議な夢のようで、これぞスズキコージ・ワールド。「くりのみ じゅっこ」とか「どぎまぎしていると」とか、思わずクスリと笑ってしまう言葉もすてき。
版元ホームページは(なんと男前なことに!)ないようです / Amazonページ(パソコン)
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『かえりみち』
あまんきみこ・作 西巻茅子・絵 童心社
あまんきみこさんの文章は、いつだってちょっぴり古風でやさしくって上品で、すてきに女の子っぽい「女学生」のよう。この絵本は、そのあまんさんのお話に、これまた女の子らしい西巻茅子さんの絵がそえられた、とても可愛らしい迷子さんの物語。かえりみちを探して泣くちいさい子さんたちの「あーん」という声や、「にこっ」と笑う「こぎつね」に、「くくっ」と笑う「こうさぎ」。読んでいてつい「にっこり」してしまうあまんきみこ節が楽しめます。わたしはこの本のお母さんが着ている水色のワンピースが憧れ。いつかこんな服が似合う女の人になりたいものです。
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(わたしの持っている本(2013年重刷)より、図書館で借りた初版(1979年)のほうが印刷の色がきれいなので、西巻さんのモダンな色遣いをより味わいたい方は、初版を一度見てみるのもいいかもしれません)

『かみのけちょっきん』
松竹いね子・作  織茂恭子・絵 福音館書店
「じょき じょき しゃき しゃき ちょき ちょき ちょっきん」。この本の「みきちゃん」と同じく子どもの髪は「おかあさん美容室」で、というご家庭、多いのではないでしょうか(うちもそうです)。長く伸びた髪がさっぱりしていく様子が面白いのか、それとも散髪を嫌がる「みきちゃん」に感じるところがあったのか、この本もこの時期なぜかよく読んで欲しがりました。輪郭のはっきりした切り紙のような絵と、リズミカルなハサミの音が見事なハーモニーを奏でる、目と耳に残る絵本でもあります。
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『ほら、きのこが……』(たくさんのふしぎ傑作集)
越智典子・文 伊沢正名・写真 福音館書店
白い網をかぶったキノコ、闇夜に光るキノコ、ハート型のキノコ、キノコ、キノコ…いろーんなキノコがたっぷりごっそり楽しめる写真絵本。けむりのような胞子を「プフォウ…」と吹き出す「ツチグリ」や、一晩で溶ける「ヒトヨタケ」なんて不思議なキノコの写真も。我が家では一通り読んだ後、裏表紙に並んだキノコの写真を眺めながら、本文のどこにそのキノコがいるのか探す「キノコ探し」をして楽しんでいました。しかし普通の家の柱(たぶん)からにょきっと生えた立派な「マツオウジ」にはびっくり! 衝撃の一枚です…。
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『ぐりとぐらとすみれちゃん』
なかがわりえこ・作 やまわきゆりこ・絵 福音館書店
とってもかわいらしい女の子「すみれちゃん」が登場する、ぐりとぐらシリーズの記念すべき第6作目!(パチパチ)このすみれちゃん、なんと大きなかぼちゃを入れたリュックをしょって、ぐりとぐらのところへやってきます。すみれちゃんの可憐なワンピース、ぐりとぐらの家の壁にさりげなく飾られたリースなど、改めて読むぐりとぐらは普通におしゃれでかわいくて、簡単な内容なのに中身ぎっしりで面白くて、ああ、ほんとうにさすがの名作。「あまい ぽくぽくの かぼちゃ」が大好きな娘は、かぼちゃのごちそうが並ぶシーンにもくぎづけでした。
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『わらって わにさん』
水野翠・作 福音館書店
いつも元気な「わにさん」が泣いている! それを見た「にわとり」は、「わにさん」を元気づけようと、「りす」「すかんく」「くま」「まんとひひ」(並べるとしりとりに!)を誘って、「わにさん」をなぐさめに出かけます。「わらって わにさん / わらって わにさん / わにさん わらってよー」…♪「にわとり」が「わにさん」のために作ったこの歌を、娘はしょげているわたしによく歌ってくれました(「わにさん」を「かあさん」に変えて)。笑ったり、泣いたり、なぐさめたり。お友だちとのやりとりがなんとなく分かってきたこの時期の子どもたちにおすすめの一冊でもあります。
版元の本紹介ページ(現在、バックナンバーの在庫は品切れ) / 現在、Amazonにも登録なし

『ちょっとかして』
きのしたあつこ・作 偕成社
おもちゃの飛行機でも、ヨットでも、むしとりあみでも、なんでも弟より「いいもの」を持っているお兄ちゃん。「ねえ、ちょっとかして」と弟が云っても、お兄ちゃんはいつも「だめ、ちびはそれでいいんだよ」。そんな弟の前にちいさなカエルが現れて……。 まだまだおもちゃの取り合いが多いこの年頃の子どもたちにとって「かして」は魔法の言葉。その言葉をめぐる、だれもが持っている葛藤(と欲望)が、色数の少ないちょっぴり外国っぽい絵で淡々と、でもどこかコミカルに描かれています。ミニサイズの判型もまたコンパクトで好ましい。
古い本(1979年初版)のせいか版元の本紹介ページなし / Amazonページ(パソコン)
/ Amazonページ(モバイル)

おはなしの入口  娘と読んだ絵本のはなし4 (1歳半~2歳ごろ)

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『はじめてのおつかい』
筒井頼子・作 林明子・絵 福音館書店
赤ちゃんのお世話で忙しいママに頼まれて、近所の商店へ牛乳を買いに行くことになった5歳の「みいちゃん」。「ママのために」という重要(かつ小さな女の子が大好き)なミッションを胸に、さまざまな困難をクリアし、少し「おねえさん」になった自分になって帰ってくる。女の子の冒険小説としても読める内容が、林さんの温かく優しい、そして細かいところまで見事にこだわったかわいらしい絵で、さらに心躍るものになっています。お店の名前が作者の名をもじった「筒井商店」だったり、散りばめられたたくさんの遊び心にもノックアウト。
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『ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ』
マーガレット・ワイズ・ブラウン・作 坪井郁実・文 林明子・絵 ペンギン社
おばあちゃんに教えられた通り「まっすぐまっすぐ」、道でないところもただ「まっすぐ」歩いていく男の子。男の子と一緒に新しい「道」を作っていくような感覚が、なんともいえないのでしょうか。5歳になったいまでも、娘は男の子が歩く見えない道を、指でなぞっては楽しんでいます。花とかイチゴとか出てくるものがいちいちかわいらしいのもうれしい。
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『おいしいよ』
神沢利子・作 真島節子・絵 こぐま社
トマト、にんじん、おさかな、ぶどう、りんごにケーキにソフトクリーム! 「ぼくの すきなものは これと これ きみの すきなものは なあに」。動物たちがそれぞれ大好きな食べ物をおいしそーに食べるシーンに、「ごはん」を食べ始めた子どもたちもきっと興味津々。茶色×ピンク(アリのページ)、黒×緑(ネコのページ)といった、70年代っぽいパキッとおしゃれな色の組み合わせもすてき(初版は1973年)。わたしが持っているのは福音館書店から出ていたペーパーバック版ですが(写真上)、現在は同じ内容のものがこぐま社からハードカバーで出ています。
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『どうぶつたちのおかいもの』
渡辺茂男・作 太田大八・絵 福音館書店
昭和の香りただよう商店街に、動物園の動物たちがなにやらお買い物にきた様子。紙屋で千代紙を買うヤギに、お煎餅屋さんでせんべいをみつくろうロバ…でもいったい何のための買い物? 家族で商店街へ行くことがハレの日の行事だったあの時代の、店によってガラリと変わる匂いまでもが感じられるような、太田さんのモダンで厚みのある絵がすばらしい。親も子も(もしかしたら、おじいちゃんおばあちゃんも)楽しめそうな、一冊で何度もおいしい絵本です。2014年にめでたく復刊したようで、現在はハードカバー版が入手可(写真はソフトカバー版)。
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『おはようミケット』
パトリス・アイスプ・作 やまぐちともこ・訳 福音館書店
広い子ども部屋に散らばる、たくさんの人形とおもちゃ。細いガラス窓の向こうには、いかにも外国風な屋根並みが広がり、朝食はココアにミルクにパンにジャム! パリに住む女の子とぬいぐるみの黒猫「ミケット」の一日を描いたこの絵本は、頭からしっぽまで限りなく華やかで明るくときに大胆な「外国」で、その強烈な異国感に、昭和の女の子だったわたしは衝撃を受けました。娘もこまごまとしたキュートな小物や、派手な色遣いが印象的なようで、この絵本はなぜかずっとお気に入りです。1979年初版の本で、現在、版元にはバックナンバーがなく、古本のみで入手可のよう。
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『いちご』
平山和子・作 福音館書店
まだスプーンやフォークが上手に使えないちいさな子は、手づかみで食べられるものが大好き。可愛くておいしい「いちご」は、なかでもその筆頭。あたたかい春が来て、緑色のいちごの実がなり、少しずつ赤くなり「さあ どうぞ」「あまいですよ。さあ どうぞ」とあちこちからうれしい声がかかるページ。娘も絵本のイチゴを大急ぎでエア採りし、両手でぱくぱくとエア食べし、最後は「おかーあさんもー」とたくさん採ってくれました(エアで)。リアルで温かみのある平山さんのイチゴは、ほんとうにおいしそう! 見ているだけでしあわせな気分になります。

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寝る前に  娘と読んだ絵本のはなし3 (1歳~1歳半ごろ)

pbok3fs 一歳を過ぎたころから日に二三度だった娘のお昼寝が、一度にまとまってきました。同時に寝かしつけも延々抱っこから、歌をうたっての添い寝(で、添い乳ナシ)に少しずつ変えていった覚えがあります。

 いわゆる“子守歌大作戦”となったなわけですが、当時のわたしには手持ちの武器(歌える歌)が、それほどありませんでした。

 そこで昔ながらの童謡を集めた絵本を探したのですが、残念なことにいい本がなかなか見つかりません。絵が少しばかり甘いアニメ風だったり、歌がずいぶん少なかったり……。ありそうでなかったのですね。

 『いっしょにうたって!』『いっぱいうたって!』は、そんなとき偶然知った絵本でした。誰もが知っている、でも歌詞をみないとなかなか歌えない童謡がたっぷり入っていて、真島節子さんの絵も上品でとても愛らしい。避難先の図書館で借りていっぺんで気に入り、すぐに本屋さんで注文しました。

 それからほぼ毎日、この二冊には、ほ・ん・と・う・にお世話になりました。
 使い過ぎてページはぼろぼろ、テープであちこち補修もしてありますが、道ばたでアリを見つけては歌い、お散歩でこいのぼりを見あげては歌い、寝かしつけ以外にもフル活用。いろいろな思い出が詰まった、文字通り手放せない本になりました。

絵本リスト
どの絵本もこの時期よく読んだものですが、この後も、何度もくり返しず~っと読んでいます(なかには5歳になった今でもときどき読んでいるものも)。なので月齢はあくまで参考程度に。

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『いっしょにうたって!』『いっぱいうたって!』(たのしいうたの絵本)
真島節子:絵 こぐま社
「20年前も、いまも、うたわれていて、そして、20年後もうたわれているだろう歌」をそれぞれ29曲づつ収録した歌の絵本。「小さい秋」「くつが鳴る」「あかとんぼ」「春が来た」「汽車ポッポ」「あめふりくまのこ」「こぎつね」などなど、誰もが一度は聞いたこと&歌ったことのある(でも、いざ歌えといわれてもなかなか正確には歌えない)歌の数々が、やさしく朗らかな真島節子さんの絵とともに収められています。子どもと歌いながら日本の豊かな四季を素直に寿げるのもうれしい。簡単な楽譜もついています。
『いっしょにうたって!』
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『いっぱいうたって!』
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『おつきさまこっちむいて』(ふしぎなたねシリーズ)
片山令子:文 片山健:絵 福音館書店
ちいさな子はお月さまを見つけるのがほんとうに大好き。大人は慣れてしまって何とも思いませんが、空にあんなものが浮かんでいるなんて(そして光ってるなんて!)、思えばすてきなことですよね。三日月、半月、雲間の月…。どのページにもちゃーんとあるお月さまが、そんな子どもの驚きと喜びをしっかりと充たしてくれるようです。またお月さまを見上げる「ぼく」の横にきまってお父さん、お母さんが描かれているのもうれしい。ほとんどの子どもにとって「お月さまの時間」=夜は、大好きな家族との時間でもありますから。
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『おつきさまこんばんは』
林明子:作 福音館書店
暗い空にお月さまが、少しずつすこしずつのぼってきて…。雲に隠れたお月さまが再び現れ、にっこりとまあるく笑うシーン。娘も一緒になっていつも幸せそうに笑っていました。細部まで磨きあげられた端正な絵、すっと頭に入ってくるやわらかで優しい言葉。上記の『おつきさまこっちむいて』と同じく、初めて「月」というものを知って以来、重度の月マニアになった娘が、とくに気に入っていた名作「お月さま絵本」です。
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『こやぎがめえめえ』(0.1.2えほん)
田島征三:作 福音館書店
「めええ」とないたり、「ぴょん」と跳ねたり、「ぽろぽろ」とうんち(!)をしたり元気いっぱいに遊ぶ、ちいさな「こやぎ」。勢いのある田島さんの筆使いも心地よく、読んでいるとこちらまで開放的な気分になってきます。我が家ではこやぎが転ぶページで、「すってん」と一緒に転ぶマネをするのが“お約束”でした。最後のページが「おっぱいを ちゅう ちゅう」というのも、満足感があっていいのでしょうねえ。
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『だるまさんが』
かがくいひろし:作 ブロンズ新社
ご存知、大人気絵本「だるまさん」シリーズ。娘もやっぱり好きで、「どてっ」では転び、「ぷしゅー」では小さくなり、「ぷっ」ではおならをしたマネをして、全身で堪能していました。一度、ちいさな甥っ子たちに読んであげたときは、それぞれが転んだり、伸びたり、それはもう大騒ぎ。でも最後の「にこっ」で、笑い顔いくつも並んだのには、思わずこちらも「にこっ」。どんな子どもにもヒットするだろう守備範囲の広ーい絵本ゆえ、プレゼントにもおすすめです。
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『たかーいたかい』
いしなべふさこ:作 偕成社
「ぼくのほうが たかいよ」と、椅子に登り、さらには机にあがっていってしまう男の子。なにかに登れば自動的に背が高くなる、という子どもがよくやる「身長のかさ上げ行為」が、かわいらしいイラストでテンポよく描かれています。シンプルな展開ときれいな色あいのせいか、わたしもちいさいころなぜかこの絵本が好きでした。正方形に近いミニ・サイズの厚紙製。
現在、版元品切れ(絶版)のため版元の本紹介ページがなくAmazonにも(今のところ)在庫がないようです

おうちになる  娘と読んだ絵本のはなし2 (6ヶ月~1歳ごろ)

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娘が八か月のときに東日本大震災が起きました。
 震災の翌日、福島県郡山市を出た私たちは、絵本を一冊も持っていくことができませんでした。

『きんぎょがにげた』『MEET COLORS』は、その後、三か月ほど続いた居候生活の間に買った絵本です。
 久しぶりの絵本に声を出して喜ぶ娘の姿に、しばらく忘れていた穏やかな「日常」が戻ってきたようで、心底ホッとしたような覚えがあります。
 
 子どもを膝に乗せ(または並んで仰向けになり)絵本を読み始めると、そこがすこしだけ落ちついた「おうち」になる。そんな絵本の効果を感じた六冊でもありました。

絵本リスト
どの絵本もこの時期よく読んだものですが、この後も、何度もくり返しず~っと読んでいます(なかには5歳になった今でもときどき読んでいるものも)。なので月齢はあくまで参考程度に。

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『きんぎょがにげた』
五味太郎:作 福音館書店
金魚鉢からぴょ~んと逃げ出した、まあるい金魚。さてさて、お部屋のどこに隠れてる? 五味太郎さんらしいくっきりとした色と線、そして大人から見るとかなり丸見えな金魚の隠れっぷりが、子どもたちのハートをつかんで離さない人気のポイントでしょう。逃げた金魚を指さして教えるときの達成感も○なようです。
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『MEET COLORS』(LITTLE EYS2)
駒形克己:作 偕成社
グラフィック・デザイナー駒形克己さんによる「0歳からの幼児のためのカード絵本」「LITTLE EYE」シリーズの2。丸、三角、四角の穴が開けられた三つ折りのカードを広げると、ぱっぱっぱっといろんな色や大きさの形が魔法のように現れます。カードを手で広げるというアナログなプロセスも、子どもにとっては楽しいのでしょうね(破れにくく、手も切れにくい特別な紙で作ってあるので、ちいさな子どもにも安心です)。箱入り12枚セット。
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『おやすみなさいおつきさま』
マーガレット・ワイズ・ブラウン:作、クレメント・ハード:絵 瀬田貞二:訳 評論社
壁がみどりで、床がピンクの大きなお部屋。赤い風船が天井に浮かび、壁には赤々と燃える暖炉が。その部屋でベッドに入る、ちいさな子ウサギ。「おやすみ あかいふうせん」「おやすみ おへや」。ゆっくりと流れていく「時」に浸されるような不思議な温かさを持つアメリカ生まれの名作絵本です。
版元ページ(個別の本紹介ページはないようです)
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『どうぶつのおやこ』
薮内正幸:画 福音館書店
ほんものそっくりの動物の親子の絵が並ぶ、字のない絵本。「この赤ちゃん、なんていってるのかな?」と親子で考えてみたり、勝手にセリフをつけて読んでみたり。何度も読むうちに自然とその家だけの「どうぶつのおやこ」ができあがる。そんな包容力のある一冊でもあります。ちなみに我が家では、絵本にでてくる動物の親子のマネを実際にしてみる、というのをよくやっていました(娘が動物の子ども役で、私たちはもちろん親役)。
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『ほっぺほっぺほっぺ』
内田麟太郎:作、長野ヒデ子:絵 童心社
表紙のかわいい女の子は「さっちゃん」。このさっちゃんが、タコ、おばけカボチャ、ワニ、山(!?)などいろんなものに抱きつき、次々と「ほっぺ ほっぺ」していきます。読みながら、また読んだあと、親子で「ほっぺほっぺ」し合うのもまた楽しい。子ども時代にしか味わえない、スキンシップのしあわせをぜひどうぞ。
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『ととけっこう よがあけた』(わらべうたえほん)
小林衛己子:案、真島節子:絵 こぐま社
ニワトリの「こっこさん」が、「ととけっこう よがあけた まめでっぽう おきてきな」でおなじみのわらべうたをうたいながら、動物たちを元気よく起こしていきます。奥付で作者の小林さんがおすすめしているように、我が家でもお昼寝のとき「ととけっこう よがあけた ○○ちゃん おきてきな」と子どもの名前を入れて起こす、というのをよくやっていました。
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歌の代わりに 娘と読んだ絵本のはなし 1 (0~6ヶ月ごろ)

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絵本リスト
どの絵本もこの時期よく読んだものですが、この後も、何度もくり返しず~っと読んでいます(なかには5歳になった今でもときどき読んでいるものも)。なので月齢はあくまで参考程度に。

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『まりーちゃんとひつじ』(岩波こどもの本)
フランソワーズ:作、与田凖一:訳 岩波書店
詩人でもあった与田準一さんのリズム感のある、少し古風だけれど味わい深い訳文がすてきな一冊。若干自分勝手ぎみのまりーちゃんもおもしろく、何度読んでも飽きません。「まりーちゃんとひつじ」「まりーちゃんのはる」の2編が収録されており、わたしはとくに前者を、もうほんとうに暗記できるくらい読み(歌い)ました。
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『せんろはつづくよ』(岩波こどもの本)
マーガレット・ワイズ・ブラウン:作、ジャン・シャロー:絵、与田凖一:訳、岩波書店
こちらも与田準一さんの訳文。西へ走る汽車の「ぱふぱふ」「ちゃぐちゃぐ」という音がじつに音楽的で、読んでいると思わず体を揺らしたくなってきます。息継ぎなしに一気に読めるテンポのいい文章も、汽車の疾走感にぴったり。渋い色あいの挿絵も格好いい。
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『にぁーう』(あかちゃんのわらべうた)
松谷 みよ子:作、長野 ヒデ子:絵、偕成社
雨の降る夜、おばあちゃんに拾われたちいさな子猫。少しずつ大きくなっていく猫とおばあちゃんの様子が、やさしい言葉で弾むように紡がれています。育児に奮闘する身には、ちいさくて弱々しかった子猫がおばあちゃんに守られてすくすくと育つ様子もありがたく、読みながら勇気づけられるようでもありました。作者は「モモちゃん」シリーズでも知られる松谷みよ子さん。
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『いないいないばあ』『いいおかお』(松谷みよ子 あかちゃんの本)
松谷 みよ子:文、瀬川 康男:絵、童心社
「いない いない…」とためた後、ページをめくり「ばあ」と云った時のうれしそうな顔! 『いいおかお』の最後「おいしい、おいしいはどーこ」で、その子なりの「いいお顔」をしてもらうのも、可愛くておすすめです。赤ちゃん時代のしあわせがたっぷりつまったような名作絵本。
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『ごぶごぶごぼごぼ』(0.1.2.えほん)
駒形 克己:作、福音館書店
カラフルではっきりとした絵、「ぷ ぷ ぷ ぷ」「ぷーん」といった変わった言葉の響き、本に開けられたたくさんの丸い穴。読んでも触っても楽しめる、赤ちゃんにはたまらない絵本です。福音館の「0.1.2.えほん」は丈夫な厚紙製のため、かなりハードに舐めてもへこたれず、本の角が丸くなっているのも安心。赤ちゃん時代はよくお世話になりました。
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『もこもこもこ』
谷川 俊太郎:作、元永 定正:絵、文研出版
「しーん」「もこもこ」「にょきにょき」……擬音と絵だけで進む世界は、言葉と世界がまだ未分化だったころの不思議な快感に充ちているよう。娘は最初の一言「しーん」を聞いただけで、うれしすぎて奇声をあげてしまうほどこの本が好きでした。もう少し歳があがってからは、声をそろえて一緒に「ぱく」と云うのも楽しかった。
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娘と読んだ絵本のはなし

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(写真↑は当時、図書館で借りていた貸し出し本のリスト。捨ててしまったものもたくさんありますが、娘の工作作品箱に一部をまとめて入れてあります)

 わたしが今の家に越してきたのは、娘が2歳のときでした。知り合いのまったくいない土地に越してきてしまったこともあり、それから一年半と少し、娘が幼稚園に入るまでの平日昼間は、ほぼふたりきりで過ごしていました。

 天気のいい日は公園へ行ったり、海へ行ったりしていましたが、わたしはもともとインドア派の人間です。だから毎日が「お外遊び」だけだと(残念ながら)正直、それほど楽しくないのですね。人間、母親になったからといって、そう簡単には変われないのです。

 そこで越してからすぐ、週二三回の図書館通いをするようになりました。図書館へは転居前にもよく行っていましたが、以前より頻繁に通うようになったのは、娘とふたりきりの時間が長くなったせいでしょう。
 
 図書館へ行くといっても(ちいさいお子さんをお持ちの方はお分かりかと思いますが)自分の本を借りることは、ほとんどできません。本棚の前でゆっくり本を選ぶ、ということがまずできないのです。せわしなく動く子どもを制しながらなんとか借りたとしても、四六時中の世話と注意を必要とする存在がいると(食事やトイレ中でさえ)、本を読む時間もあまりありませんでした。

 古本屋としてそれまで本まみれの生活をしていたわたしからすると、図書館に行って自分の本を借りないなんて、我ながら何が起こったのかと思うほどの環境の変化でしたが、でもだからといって仕方がありません。

 この子を膝に乗せて本を読んであげられる期間はもしかするとほんの少しで、これを逃すともう二度とないかもしれない。第一、お外遊びよりも絵本を読むほうがわたしにとっては楽しいし、お母さんがいい気分であるほうが、娘にとってもたぶんいいことだろう。
 そう思い、できるだけたくさんの絵本を読んでやることにしたのでした。

 さいわい娘も本が好きで、このころ図書館で借りて読んでいた絵本は、一か月におよそ100冊ちょっと。周辺の図書館、計四館を順繰りにまわって借りていました。
 もちろん100冊ぜんぶが違う本ではありません。気に入った絵本は何度も繰り返し読みたがるので、借りたことのある本をまた借りることもよくありました。
 選び方はいたってシンプルで、基本は娘が好きな本を選び、わたしはそれを見ながら時々新しいもの(気に入りそうなものや、すこし背伸びした内容のもの)を混ぜてやるといった感じで、これは5歳(年中)になった今でもあまり変わっていません。

 図書館で借りてほんとうに気に入った本は、できるだけ買ってやることにしていました。でもそれには条件がひとつあり、おとうさんとおかあさんが気持ちよく読むことができる本(内容や絵など)に限ることに決めていました。読み聞かせるのは親で、目的は勉強のためではなく互いのコミュニケーションのためなので、そのためにはみんなが楽しい気分になれるように、と思ったからです。

 娘の本棚にはそうやってそろえた絵本がたくさん入っています。
 最近は自分でも読めるようになり、借りる本も「自分で読む本」の割合が少しずつ増えてきました(このところは角野栄子さんの「おばけのアッチ」シリーズがブームだそうです。懐かしい~)。たぶんもう少ししたら図書館へも自分で行くようになるのでしょう。

 というわけで、この辺りで記録もかねて、0~3,4歳ごろの娘が喜んで読んでいた本を短いコメント付きで少しずつ載せていこうと思います。わたしが(元)古本屋だけにオーソドックスなものが多めですが、娘に読み聞かせるなかではじめて知った新しい絵本もあります。絵本の専門家でも絵本屋さんでもないので、どれだけ参考になるかわかりませんが、どんな本を借りようか(買おうか)迷っている方々のお手伝いに少しでもなれればとてもうれしい。
(…と、ここまで書いたら思ったより長くなってしまったので、本を載せるのはまた後日にします…ぼちぼち更新しますのでよろしくお願いします)

極上の通俗小説

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店をやっていたころ、古本を棚に入れる(またはネットに上げる)とき、つい読みふけってしまう本というのがありました。やめようと思っても、なかなかやめられない。この『ある美人の一生』もそうやって出会ったなかの一冊です。

獅子文六はご存知のように昭和を代表する小説家の一人です。
しゃれたユーモアーを感じさせる作品には、テレビ・映画化されたものも多く(『娘と私』など)、随筆『飲み・食い・書く』など食通としても知られていました。
脚本家でもあり、若いころ演劇を学びにフランスに渡ったという経歴の持ち主でもあります(ちなみに最初の奥さんはそこで出会ったフランス人です)。

小説の主人公は「わき子」という名の女性です。明治生まれの彼女は、幼いころから誰もが認める飛び切りの「美人」でした。対して妹の「きみ子」は、「不美人という方でもないのだが、少し、顔立ちに癖が」とありますから、今でいうとファニーフェイスという感じでしょうか。

美人の姉と、そうでもない妹。獅子文六は、タイプの違う姉妹の山あり谷ありの人生を、結婚、出産、子の病死、不妊、夫の不貞、隠し子発覚、家族の死といった女の人生のあれこれを織り交ぜながらぐいぐいと進めていきます。

獅子文六は人を描くのがとても上手な作家です。
たとえばすばらしい美人であるわき子は、自分の美しさをきちんと認識する一方で、美人としてのたしなみも常に忘れない、嫌になるほど生真面目な優等生として描かれています。また妹のきわ子は、容姿はそれほどでない分、人あしらいがうまく、そのざっくばらんな性格とコミュニケーション能力で世間(そして人生)をうまく渡っていくタイプの女性です。
長所も短所もくっきりはっきり容赦なく描いてくれるおかげで、登場人物に確かなリアリティが生まれています。

また女性特有の声に出さない「無言のやりとり」も獅子文六は見落としません。
若き日のわき子は、自分の結婚と妹の縁談を無意識に比べ、より恵まれていない妹の縁談に賛成します。また中年に差しかかり、家庭生活が安定してきた妹のきみ子も昔は感じなかった姉への優越感を「姉ほどの美人でなくても、姉よりも幸福な現在を、掴んでいる」と抱くようになります。
ユーモアーを感じさせるテンポのいい文体にくるまれているせいで、まろやかになってはいますが、互いの境遇を自然に(でも決して悪意なく)計ってしまうふたりの様子がズバリと書かれていて、ところどころに挟まれるそのやりとりこそ「女の人生」だと思い知らされるようです。

獅子文六は、気難しいことで知られた作家でした。
周囲の人々の、時にはありがたくない癖や特徴にすばやく気がつき、それらのエッセンスを見事に拾いあげることができた。有名な気難しさは、もしかしたらそんな作家の「才能」からきたものかもしれません。登場人物が魅力的なこの本を読んでいるとそう思いたくなってきます。
また基本的にはハッピーエンドで、一気に読んでしまいたくなる面白さがありながら、鋭い人物描写のおかげで俗に流れすぎない。そういう意味でいうと、彼の作品はイギリスの作家ジェイン・オースティンやアガサ・クリスティに通じるものがあるような気もします。

朝ドラなみの人生を生きる二人の姉妹を追いながら、時折表れるイタ気持ちいい人物描写にツボを押され、なかなかページを閉じられない。極上の通俗小説です。

Amazonページ
獅子文六『ある美人の一生』1965年 講談社(ロマン・ブックス・現在版元品切)
獅子文六『ある美人の一生』1964年 講談社(単行本版・現在版元品切)
(本文冒頭の画像は、ソフトカバーのロマン・ブックス版です)

亡き妻へ 追憶集『白百合』 

「饅頭本」をご存知でしょうか?
饅頭のことを書いた本……では(残念ながら)ありません。故人を偲んで配られる追悼文集、または遺稿集を指す言葉で、お葬式のとき配られる葬式饅頭にちなんだ古書店用語です。

この饅頭本、故人がよほど有名でない限り、古書値はほとんどつきません。自費出版本の部類にはいる本ゆえ、内容も当然のことながら玉石混淆。なかには故人の華々しい(と思われる)業績を事細かに羅列した、辞典なみに分厚いものもあり、正直、「これ、もらってもちょっと困るなあ」と思ってしまうものも少なくない。
とはいえ、どんなジャンルのものでもそうですが、なかにはすばらしく面白いものもあります。少部数で非売品の、そんな饅頭本に出会うととてもうれしい。名もなき人の人生を、しみじみと教えてもらったような気分になります。
ずいぶん前、偶然手に入れた追憶集『白百合』も、そんな一冊でした。

編著者は、大正天皇の侍医であった西川義方さん。西川さんは『内科診療の実際』という、昔の開業医のほとんどが持っていたロングセラー(表紙の色をとって通称「青本」といわれたそうです)の著者でもあります。
そして『白百合』はその西川さんが40歳で急死した妻の一周忌に作った追憶集でした(西川さんは「追悼集」ではなく「追憶集」としているので、以下、ならいます)。
亡くなった奥さまは、明治25年、熊野、いまの和歌山県新宮市で材木商を営む裕福な家の末っ子として生まれたそうです。そして女学校を卒業後の19歳の春、東京帝国大学を卒業後、新宮病院長をしていた一まわり年上の西川さんと結婚。その後、日本医大で教えることとなった夫とともに上京。一家の主婦として20年余りに渡って家庭を支え、六男一女の七人の子どもを育てていたそのさなか、わずか二日の急患いで、亡くなってしまったといいます。末の子はまだ幼児でした。

いくら故人のためだとはいえ、追悼文集を作るのは、手間も時間もそして費用も、膨大にかかるものです。
おまけに当の夫は、大正天皇の侍医を務め、医者の六法全集ともいわれた本を残したほどの方。仕事に、執筆にと、さぞ多忙な日々を送っていたことでしょう。できるだけサクッとまとめたとしても、追悼集を出す、ただそれだけで、もう充分だったはずです。
ところが『白百合』がすごいのは、そんなサクッと感がみじんも感じられないところにあります。それどころか、こちらが驚くほどの手間のかけようで、その意外性がじつに興味深く、また胸を打つのです。

亡き妻のためには多少の労も惜しまない。
それはたとえば亡き妻の日記を掲載した章「妻の日記」からも伝わってきます。冒頭にそえられた、全12ページにも及ぶ西川さんの解説によりますとこの日記は、大正15年、大正天皇の侍医だった西川さんが、ヨーロッパへ医学旅行のため出発した年のものでした。一年の予定で旅立つ夫を見送るため、妻は船の出る博多まで一緒に行く予定だったといいます。ところが様々な事情で、ふたりは途中の神戸で別れざるを得なくなってしまいました。
「車中一人にて涙のかわくひまなし。生まれて初めての淋しさを覚ゆ」
その時の気持ちを、当時の日記にこう記した妻に対し、
「送りたくてたまらぬあなた、ついて行きたくてたまらぬあなたが、送って貰いたくてたまらぬ私、ついて来て貰いたくてたまらぬ私に送られて、私より先に汽車の客となって東へ、十分遅れて私は西へ淋しく旅立って行く」
と夫のほうも、じつに情熱的に振り返っています。

亡くなった妻への思いを熱く語る。『白百合』のどのページからもうかがえる、西川さんのそんな様子は、口下手で愛情表現が苦手、という私たちが抱きがちな「明治生まれの夫」とは、ずいぶん様子が違います。
けれども明治の終わりから大正にかけての時代はまた、与謝野晶子・鉄幹夫妻を中心とする浪漫主義文学運動のおこった時代でもありました。
「本当に私は淋しい、本当に私は悲しい、妻よ、妻、なぜ、あなたは死んで往った」
『白百合』のメインを飾る夫による追悼文「妻よなぜ死んだ」(じつに直球なタイトルです)で、こう書く西川さんは、同じ文章に、
「男は強く且(か)つ大きくありたい。然し蜘蛛の糸を揺(ゆす)る微(わず)かな風にも、情感の琴線は顫(ふる)わしたい」
との信念も記しています。対面を気にせず、自らの思いを率直に表現する。西川さんは、もしかしたらそれこそが真の男らしさであると思っていたのかもしれません。

さて、内科医であった西川さんは、もうひとつ、意外な顔を持っていました。それは各地に残る温泉の効能を研究する「温泉博士」としての顔です。
『白百合』によりますと、じつはこの「温泉研究」は亡き妻との旅行を兼ねて行っていたもので、いずれは集めた資料を整理し、夫婦ふたりの共著としてまとめたいと考えていたのだとか。
「元来この書は、亡き我妻やす子との共著たるべきものである」
一周忌に間に合うよう、『白百合』と共に上梓した『温泉と健康』の序文で、西川さんはこう記しています。そのうえで「共著」という章を『白百合』にもうけ、
「私の総ての著書は、あなたに依って慰められ、励まされて成ったものであるから、(略)あらためて、あなたにお礼を申すことにしました」
と、ロングセラー『内科診療の実際』やこの『温泉と健康』を含む、これまでの著書すべての序文を収めています。

不勉強なわたしは、『白百合』を手に取るまで、西川義方さんというお医者さまのことを知りませんでした。しかしながら、こんな明治生まれの人がいた。それを教えてくれたのは、西川さんが妻のために作ったこの渾身の一冊があったからで、そういう意味でいえば、この「饅頭本」もふたりの立派な、そして最も大切な共著のひとつ、ではないかと思うのです。

 『白百合』 編集兼発行者・西川義方 昭和7年発行

この本は、国会図書館に収められており、目次等の書誌情報もこちらで見ることができます(iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001923956-00)。
また池内紀さんの著書『二列目の人生』(集英社文庫)にも、西川義方さんについて取り上げた章があり、これによると西川さんは、三千ページにもわたる『内科診療の実際』の70版に及ぶ改訂のために、「たえず新しい医書にあたり、うまずたゆまず筆記した」のだそう。筆まめで律儀で、意欲と誠意にあふれたその姿勢は、『白百合』にも通じるものがあるようです。