「森の花嫁」

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「森の花嫁」という昔話を読みました。
読み聞かせのための冊子『おはなしのろうそく 2』に入っているお話で、フィンランドの昔話らしいのですが、これがもうすばらしく女子目線でとてもおもしろかったです。

お話はお百姓の父親が、三人の息子にそれぞれ花嫁を連れてくるよう命じるところから始まります。倒した木が指し示す方角に導かれ、上の二人は農場で許嫁を見つけますが、森に向かった一番下の息子が出会ったのは、なんと小さなネズミでした。
「お前なんか数のうちに入らないよ。ただのネズミだからな」
という息子に、ネズミは云います。
「私を花嫁にするのよ」

「ヒトではない」という、ある意味、究極の「容姿」を持った、異形の花嫁の物語は、世界各地に伝わっています(我が国でいうと「鉢かづき姫」でしょうか)。
蛙だったり、ネズミだったり、姿かたちは話によっていろいろですが、どの話にも共通しているのは、「どんな姿(容姿)でも構わない」と甘くささやくヒーローの存在です。

「森の花嫁」でもそれはやはり変わりません。
下の息子は森で会った小さなネズミを、その美しい歌声から花嫁にしてもいいと(あっさり)思い決めます。そして父親が許嫁を見たいと云った時も、
「いいさ、笑われたって。あいつは、今まで立派に俺の許婚の役を果たしてくれたんだ。俺だって、あいつのことを恥ずかしいなんて思うまい」
とキッパリ断言するのです。

おまけに父親に会うために家を出たネズミが、予期せぬ出来事によって川に落ちたときも、
「ああ、可哀想に! 溺れてしまって……。(中略)俺はほんとにお前が好きだった……。お前のほか、一体誰を花嫁にすればいいんだ……」
と、ホッとするどころか本気で悲しんでくれるのです。
どんなに気立てがよかろうが、家事能力が高かろうが、ネズミと結婚、といわれて了解する男など、現実社会ではほぼ皆無だろうにすばらしい。
筋金入りの「中身重視派」なのです。

もちろん最後は、許嫁のネズミは悪い魔法にかかった王女だった、というオチで、息子は「世にも美しい」妻と王国(冨)を同時に手に入れるわけですが、それさえも「どんな姿でもいいと云った息子へのご褒美」のようで、この話ぜんたいが、容姿にとらわれる男子への女子的呪いのようでもあります。

でもしかし。そもそもの話、世界中にある異形の花嫁の話って、いったい誰が作ったのでしょうねえ。男の人ではなさそうだ、と思ってしまうのは、わたしだけでしょうか。

 「森の花嫁」『おはなしのろうそく 2』東京子ども図書館編 大社玲子さし絵

短い童話や民話、手遊びなどを集めた、主に読み聞かせのための薄くて小さい冊子で、1~30まで刊行されています。 収録リストなどは、公益財団法人 東京子ども図書館「おはなしのろうそく」。